杢について1.不思議な柄のなぜ!?と興味を惹く理由!?
定番素材だからこそ馴染み深い親しみの中に
強烈な個性を有する極端な違いに
なぜ?どうして?と惹かれ興味を増す『杢(もく)』
根っこや枝の節の近くにできる独特の文様「杢」。
不規則かつ様々な方向に加わる力によって現れる自然の柄。
柄の濃淡は元々のものですが、使い込むほどに濃い部分はさらに濃く、
不規則な柄が、さらにはっきりと主張を増してくるのでございます。
芳雲の使い込んだ私物杢木札と製材したての新しい杢を並べてみます。
初々しく明るい光沢がある「命名タグ」の付いた新しい極上杢木札。
・自然の柄だから見飽きることなく長年の変化を楽しめます
使い込んだ杢の木札と比べると濃淡が薄く見えます。
これは一般的な素材と同様で、製材したては木肌の色は薄く、使い込むとやがて光沢が出て落ち着いた味わいになります。
しかし、この杢の凄い所は使い込むほどに色の濃い部分はさらに濃さが増し、光沢と共に風格となって表出するのです。
将棋の駒として使われる本黄楊も、杢の部分が使われると大変高価に取引されます。
自然の柄の濃淡が大きいほど価値も高いとされるため、濃淡を引き出すために素地の状態で数年経過させ色乗りが良くなってから駒に仕上げるということもある位、装飾的に珍重される素材なのでございます。
こうした超高級の駒が普段使われることはなく、見かけるのは大きなタイトル戦の決勝のような舞台で見かける程度です。
先日の藤井二冠がタイトルを獲った対局でもこうした杢の駒が使われたのを見かけました。
木札の場合は、普段から手や肌に触れてお使いいただくことが多い為、使い込んで油分が定着することを想定しております。
落ち着いた光沢と自然杢の調和を作るのは、お使いになられる方自身であり、何とも言い尽くせない味わいへと変化し愛着が増す「自分だけの自然の柄」なのでございます。
杢について2.黄楊や桜のどんな部分なの?とれる量は?
杢は根っ子や節などの周辺にある不規則な力が加わった部分。
極めて限られた一部だけにでる希少部位!
濃淡が強く広く大きく柄が出るほど価値が上がります。
杢の装飾性を求めない方、ご存じない方には、好ましくない部分である可能性が、、、それは、汚れや傷かと思うような不思議な自然の柄でもあるからです。
したがって、通常の仕入れでは、なるべく素直な木目を選びたい。
全く木目のない木はありませんが、自然の産物ですから必ず一定の木目ということはありません。
さらに木札は数センチ四方の小さい細工物ですから好ましくない部分がありますと、とても目立つのでございます。
とはいいましても、木目や節は元気な木の証明でもありますので、全体の質感や色味を鑑みつつ素材は必ず自分の眼で見て厳選するのでございます。
その
自然の中の一部に不規則な力が加わって現れるのが杢なのでございます。
また、杢を欲張り節の多そうな素材を選んだ場合、素直に木取りできる部分が少なく無駄が多くなってしまいます。
扱いが悪くても杢が多く取れれば良いのですが、、、
逆に、杢の出る根っこや節の周辺部分は割れ裂けが多く、木札として形になったとしても端っこの一部に少しの模様のことが大半です。
狙い過ぎると本末転倒!ですから通常の仕入れに適している素材を中心に仕入れ、その一部に杢の様な部分があるのかないのか!?
一期一会なのでございます。
桜材も同様で木札に適した部分のほんの一部に、こうした不可思議な模様が出ることがありますが、
杢の周辺は不規則な力が加わる部分ですから荒れ材のことが多く、流通する時点で省かれてしまうことも量が少ない要因の一つでもあります。
杢について3.杢の質感や木札への成型・製材のこと
不規則に様々な方向からの圧力に耐えた部分ゆえ、
通常の素材より堅く凝縮感があり光沢も良好です!
前項でもお伝えしましたが、木目の通った素直な材の方が作業効率が良いのは明白です。
木目の素直な板材で細長い棒状であれば、一度に数個分の下磨きができます。
しかし、杢は通常の製材過程で省かれた部分であることが多く、続けて2木以上の杢が取れる素材はありません。
下磨きの工程から「1段階1段階1木ずつ」という気が遠くなるような時間を要します。
それでも、既にサイズ幅になっていれば良い方。
長い材の端に杢がある!これはラッキーなのですが、木札1木分全体の長さにまで広がる杢であることは少なく、
時には1木、1木、割れ裂け節をよけながらの木取りが必要なこともあります。
また、非常に綺麗な杢が入っていても黒い滲みで見た目が損なわれたり、小さな節が出ていたり、
時には、素晴らしい杢も節ごと含めないと木札の形にならなかったり・・・
こうして稀少に加え、木取りの難しい素材がようやく無傷で形になった暁には、
「 威厳 」という言葉が似合う木札となって誕生するのでございます。
杢の材質・質感について
ご覧の通り杢は、様々な方向への不規則な力が加わった部分ですので、通常の部分よりも堅く密度が高いです。
元来、本黄楊や桜は堅い素材ですが、より密度の詰まった印象で磨き上げた時の光沢も良好で、使い込むほどに奥深い照りがでるのでございます。
芳雲が約15年と少し使い込んだ桜材の杢。
マイ油〜が沁み込んで、自分色に染まった光沢に仕上がっております。
使い始めから角と側面に欠けがありましたが、圧倒的な存在感を有する木札に成長しました。
極レア素材は一期一会、素敵な出会いがありますように。