知り合いの方からも「3回もみちゃったよ!」と好評を頂き、とても嬉しく思っております。蒲生芳雲の木札作り動画『 喜ぶ笑顔のために! 正直で真っすぐな ものづくり 』。
実際に自分の眼で見て素材を仕入れ、皆様の想いを刻む作品として木札が完成するまでを纏めたものですが・・・
まだまだ、これだけじゃ伝えきれていない!
という想いから、工程ごとに細かく記事にしてまいりました。
(細字は木札に関すること、太字は彫刻に関する工程)
・木札に彫刻 ←今回の記事
「神は細部に宿る」、私はこの言葉をとても大切にしています。
江戸職人の物づくりに対する概念的な表現で、
『人の手が入ることにより職人の想いが魂となって作り上げるものに宿り、個性となって現われる。』
デザイン的なことだけでなく機械的なこと(整備したり動かすのは人)も含め、人の手が入ることにより想いが細部に宿っていくという考え方です。
神は細部に宿る。
「喜ぶ笑顔のために!」
素材の特性を活かし、温もりを感じる作品に仕上げてお届けしたい!
枠取りや文字の配置調整に至るまで、手作業のアナログ的な要素を多く取り入れ、丁寧な作りを心がけていることは、これまでに記してまいりました。
そして、今回の製作の工程で唯一の機械的要素が強い部分になりますが、文字などの彫刻工程について記事にしたいと思います。
レーザー彫刻機は、このように量産できることも特徴の一つで、木札の形などに切り抜いたりも出来てしまうため、
味気ない画一的な作りにもなってしまう一面も持っているため、この部分しか知って頂けない方は「レーザー彫り」と聴いただけで、悪い印象を持ってしまうことが少なくありません。
しかし!!!
レーザー彫刻機のもう一つの特徴!
細かい部分もシャープに綺麗に彫刻できるという長所があります。
マッチ棒程の大きさで、これほど綺麗に角を立ててシャープに彫刻することができるのです。
しかし、角を立ててシャープに綺麗に彫刻するには、様々な調整が必要なうえ、彫刻する時間も多くかかります。
手前の綺麗に彫刻された「宮藤青年会の木札」を『1つを彫刻する時間で、およそ背面の浅い彫り12木分』が彫刻出来てしまいます。
その彫りの違いを確認してみます。
彫りの深さや文字の輪郭を見て頂くと一目瞭然。
輪郭もギザギザ、彫りも浅く立体感がなく、いかにも量産で趣などは皆無でございます。
量産の仕事は時間を掛けずに多く作りますので、どうしてもこうした粗い仕上げになってしまいます。
では、深くシャープに彫刻するには?
一度にたくさん彫刻するのではなく、1つずつ、ゆっくり時間をかけ彫刻していきます。
冒頭の動画では、かなーーーり短縮して編集されております。
ご覧の様にレーザーを照射して彫刻しますが、シャープに彫るためには解像度を高くより強い出力を掛けることになります。[木の素材により適した最大の出力を見極め、より細かく時間かけた彫刻が必要]
彫刻の際に熱を生じますので、彫刻後の表面には木の脂(ヤニ)が付着いたします。
木の種類にもよりますが、脂が出る位に強い出力をかけませんと、シャープな深い彫りはできません。
その代償という訳ではありませんが、脂を綺麗にふき取る工程が発生し、素材よっては非常な時間を要します。
また、黒檀のように黒く極、極堅い素材は、より強い出力と長い時間が必要です。
素材に適した凹凸いすべく、必要かつ強い出力が出る彫刻機を用いて、さらに木札専用機として部品のカスタマイズもしております。(詳細は秘密)
そのカスタマイズした彫刻機が、より真価を発揮するのが、細かく緻密な彫刻なのです。
ハサミや包丁などの道具と同じ考えです。
良い包丁も研いで手入れをしないと切れ味は悪く味もさえません。
しかし、一般的な包丁より専門的な包丁をより手入れした方が仕上がりや味が良いのと同じこと。
そこで今一度、「量産的な解像度が低い木札」と『フダヤドットコムが施している彫り』を比べて見ます。
左から芳雲クオリティ→量産クオリティ→芳雲→量産品
家紋の部分や「鳥越」など画数の多い文字、短冊の中の「龍朗」の文字などは、はっきり違いが出ております。
他の部分も輪郭などを比べて頂くと、輪郭の出方や彫りの立体感やシャープさの違いが見て取れます。
さらに!
もっと深く彫り込むとどうなる?
細かい部分が欠けやすく強度に難がでことに加えて、ゴミや埃が貯まりやすいということにもなります。
やり過ぎは「野暮ったい」ということにも繋がります。
・・・〇三、(三 カッコの位置のゴミが無駄に深すぎて取れない(笑) 気になり始めると所々が気になって。。
また、出力を強くかけることになるので、レーザーの強すぎる照射は木を侵食して木で残る部分のシャープさや力強さが甘くなってしまいます。
左から、芳雲クオリティ→深い彫り→量産→芳雲→深い→量産
彫刻部分が一番濃く見える木札は前出の深い彫りの木札、強い出力を掛けているので焦げが強調されて見えます。
一見ハッキリしているようにも見えますが、手に取って身近で見比べると彫刻した部分の浸食が顕著でありシャープさに甘さが見られるのです。
さらに、機械的な要素だけでなく、木は自然素材ですから季節により含む水分量が違うので、いつでも同じ出力で良いということはなく、同じ時期で同じ種類の木でも、時々により見極めて出力を調整もするのでございます。
「木の種類」によっても加減は変わりますし、素材によっては「サイズ毎によって見え方も変わる」ので『出力を変えて彫刻』もしております。
全ては、「素材により」「サイズにより」「時々の個体差」も含め自然素材である木を見極めて、一つの作品にするべく調節をするのです。
工程が複雑な象嵌木札などは、何度も違う出力で彫刻を重ねます。程よい深さでバランスよく!
これからも、木や仕上げのことと並行して彫り方の研究も忘れられないことでございます。
これで、ようやく大まかな制作工程を全て記したことになります。細かい部分を上げたら限がありませんが、これからも気付いたこと足りない事があれば記してまいります。
***木札職人芳雲の木札作り***
(全工程公開~リンクしました)
・「子持ち枠」枠取りの調整
(隅から隅まで縁起よいことがあるように)
・木札に彫刻 ←この記事
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・彫刻後の仕上げ磨き
***「神は細部に宿る」***
正直で真っすぐなものづくり
□木札周辺の豆知識2
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