浅草鳥越
名入れ 彫刻木札専門店
代表職人芳雲の木育て日記

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2018年10月18日(木)

隅から隅まで縁起よいことがあるように!木札がスッキリ見える秘訣![文字調整 編]

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 少し間があいてしまいまいたが「第2弾~福が、良いことが沢山ありますように!の願掛け文字調整」について、どどーーんとお届けいたします。

さて、同じ「亮太(りょうちゃん)」の木札・・

どっちが芳雲の木札?文字調整編

どちらが見栄えするでしょうか?

先程の木札を拡大してみます。

木札の文字調整のあるなし

 願掛けとして願いを込める千社札、そして、寄席、歌舞伎などに使われる文字が一様に『太くて画面一杯に大きく描かれる』のは意味があります!

画面一杯に文字が表現された木札

それは!
「隅から隅までお客様が沢山入りますように!」という験担ぎの意味、どういうことかというと!

縁起の良いことがたくさんありますようにと願掛けの木札

『福や縁起の良いことが隅から隅まで隙間なく沢山入ってきますように!』と、縁起の良い書体で画面一杯に隙間なく大きく表現し験を担ぎの意味合いが込めれれているのでございます。

願掛け木札

 したがって、できるだけ大きく!
その中でスッキリ見えるように調整していく工程をじっくりご案内いたします!!!

まず、木札に文字を彫刻する前に全体のバランスを取るため下書きを作る第一段階、文字をタイプします。

調整する前の下書き「さゆり」

 何も調整しないと1文字1文字の大きさもまちまち、文字の間隔などもバラつきがあります。

これを1つ1つ丁寧に、隅から隅まで入るように大きく調整していきます。

下書きを作るにあたり一文字一文字ばらして調整

 1文字1文字、丁寧に調整することで、これだけ見え方が変わります。

調整前と調整後の木札の下書き

 人の手が入ること、それは、心がこもり、魂が宿ることになり・・・作り手の個性となって現れるのでございます。

文字を調整した彫刻木札と調整しない木札

たとえ、1文字の表現でも、

一文字でも間を考えて調整して下書きをつくる

 間の取り方ひとつで表現は変わりますので、手は抜けないのでございます。

一文字のバランス調整は間を意識する

 この決められた枠の中に表現するということが案外と大変な訳でございまして・・・

紙にフリーで名前を書いてみます。

フリーで書いた文字

 これに枠をつけてみますと、所々に余白があり、「大きい」「小さい」、「幅が広い狭い」「縦に長い短い」と四方八方へと大きさを使って表現されていることが分かります。

手書きの文字を枠で囲う

 次にあらかじめ枠を囲った中に、名前を一杯に大きく書いてみます。

枠の中に名前を書いた

決められた枠内に収めようとすると、文字の勢いがない窮屈な表現になってしまいました。

一緒に見ると一目瞭然!

枠付きの文字の表現、活きた文字、活きない文字

木札では、決められた枠内で表現をしなくてはなりません!

「福が、良いことが沢山きますように!」と、出来るだけ大きく、その中で野暮ったくならないようスッキリと見える表現を心がけるのでございます。

したがって、1つの文字の調整=文字間の間(ま)によって見え方が違ってくるのです。

木札職人 蒲生芳雲

したがって、同じように見える木札でも、作り方、デザインによって個性として見え方も変わる。

それは、
「自分が持っていたいものをつくる」ことに繋がります。

平成30年2018時点の芳雲の表現

これが平成30年2018時点での私なりの表現ということになりますが、

今回は、さらに深く切り込んでご説明いたします。

「本田」という二文字、ただタイプして打ち込みます。

文字の調整

二等分した枠内ではみ出さないように調整した下書きデザインです。

これを彫刻してみます。

本田の文字を調整中

少し調整した右側の方が、何となく良いことは分かりますが、四角くて面積の大きい「田」の字が大きく見えてしまいます。

そこで、紙に手書きした文字の強弱を考えて調整を加えてます。

芳雲の文字調整

「田」の字の方が大きく見えるので小さ目に上下左右調整、「本」の字は枠からはみ出しても、くっつき過ぎない程度まで大きくして彫刻したのが「一番右側の本田」です。

本田の文字を調整

一番右の調整後、何となくスッキリ見えているでしょうか?

さらに文字数が増えるごとに、

横幅の強弱だけでなく、上下の繋がりも含めたバランス調整が必要となり、それぞれの文字の特徴を考慮しながら

枠の中にできるだけ大きく=縁起の良い文字を表現する。

ただ大きくする訳ではなく、

文字を調整することで文字が活きる

「手にして下さる皆様に、少しでも良いことが沢山ありますようにとの願いを込めて」丁寧に調整していくのです。

こうして、1文字、1文字丁寧に調整することで、

スッキリ見えるだけでなく、文字が活き活きと躍動を始め「木札」の個性となって表現されていく、、、

言い換えますと・・・私自身の心持が表現されるということでもありますから、当然の如く昔の作品は・・・

2003年頃約15年前の芳雲の作品

約15年前の作品。
職人さんや芸術家の方が若き頃の作品を見て、

若い!と感じるような、ちょっと恥ずかしい!?

自分の過去ですから、一目で古い方から順番に並べることができます。

左から古い順に芳雲の作品

何となく、これでいいのか?と、模索している様子が伝わってきます。

しかし若さからの勢いも感じられます。

約10年前頃の芳雲の作品、色々な種類が増え始めた。

色々な素材が増え始めた12、3年前になると方向性が固まりつつあるのが見て取れます。

やがて、彫刻する機械も進化して、彫りの深さなども変化し表現に幅がでてきたことが伺えます。

2018平成30年時点の芳雲の作品

さて、この先はどの様に進化を遂げていくのか、自分でも分かりません。

しかし、少しでも良くなるのでは?と思ったことは、どんなことでもトライし続けることを忘れないよう精進してまいります。

かなり長くなりましたが、木札がすっくり見える秘訣「験を担いだ文字調整編」、この辺で幕にいたします。

***木札職人芳雲の木札作り***
(全工程公開~リンクしました)

素材の仕入れ 目利き

彫刻前の下磨き

木札の穴あけ

「子持ち枠」枠取りの調整

文字の配置、バランス調整 ←この記事
(隅から隅まで縁起よいことがあるように)
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木札に彫刻

彫刻後の仕上げ磨き

無垢の生木による彫刻木札に辿りついた理由

***「神は細部に宿る」***
正直で真っすぐなものづくり

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