浅草鳥越
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代表職人芳雲の木育て日記

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2024年8月26日(月)

青黒檀だるま札の木取りにチャレンジしてみた

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「青黒檀のだるま札って、ないんですよね!?」

「青黒檀のだるま、ないんですよね!?」

 

これまでに何回、何百回、

もしかすると千回を超えたと言っても過言ではないくらい聞かれたであろう、、、

そして、これからも聞かれ続けるであろう質問。

 

意地悪で作っていない訳でなく、できることなら通常ラインナップとしてご紹介したいと思いますが、ワンサイズ下の三丁御頭サイズ「厚み5ミリで縦7.5×2.5センチ」でも難儀する木取り。

 

昨今、通常ラインナップの維持もギリギリの状態ですが、えーーーい、やーーーーーーと、言うことで木取りに厚み7ミリの木取りにチャレンジ!

 

今一度、どの様な原木から選んで木取りから製材、木札への成形までを記してみます。

 

 

 

成木でも直径20センチにも満たない細い青黒檀

 

 

この個体は直径13センチ、この程度がレギュラーサイズ。

大人が手を開くと約20センチ程度ですから、大人の男性であれば片手で掴める太さ。

 

水に沈む木材ですから、密度は半端なく木材は極詰まっているのですが、断面の画像でも分かるとおり鬆(す→木材の中にできる隙間)も頻繁に散見され、大きなサイズに木取りできあい要因の1つでもあります。

 

仕入れは、この断面と外側の白田部分(外側の白い部分)の様子で判断するしかありません。

 

 

ちなみに買付け時に丸太上から確認する事は、

1.断面の割れ裂けの大きさと数
2.大きな鬆(す→木材の中にできる隙間)がないか

3.時折みられる茶色の筋目の有無、多少

 

とは、言いましても稀少な素材ですので50、100といった中からでなく、多くて4、5本、大体は2、3本の中から!

 

 

えい!やーーー!と、試みるのでございます。

 

そして、この材木を希望の厚さに切り揃えるには大きな設備が必要ですので、厚みの加工は材木業者様にお願いをしております。(その後に磨き上げます)

 

 

 

黒檀まぐろと青黒檀の板材

どの素材も仕入れた後に必ず素材を持って氏神様へ。

ちょうど折よく同じ真っ黒い木材「黒檀まぐろ(画像左)」と「青黒檀(右)」の比較、

 

 

この時点で大きなサイズの木取りが出来るか否かが想像できますね。

 

「黒檀まぐろ」も、私が求めるような真っ黒い個体は少なくなっていますが、個体自体の材質は安定していますので、大きいサイズの木取りが可能!すなわち、「四丁だるま札」や「五丁みりょう」の幅と厚みが確保できるのが『黒檀まぐろ』という訳です。

 

 

青黒檀を丸太から木札の厚みの板材へ

この板材への加工までは、大きな設備が必要なので材木業者様にお願いし、この後から弊社工房にて、サイズの幅に合わせて切り揃え彫刻前の下磨きへと移っていきます。

 

そうなんです!

丸太から板材へは自身で加工ができない、、、

 

 

青黒檀です。

切り立ては、樹質の関係から緑がかった黄色っぱい独特の表情。

 

どの辺りで7ミリの板材を木取りするかの判断は?

この時点でも断裁してから少し時間が経っているので、本当の切り立てはもっと色が黄味がかっていたかと想像されます。

 

青黒檀木札の通常ラインナップは5ミリですが、表面の状態が良さそうな所でいつもより厚く裂いて頂き7ミリ強に、まず厚みを調整していただきます。

 

『なるべく状態の良さそうな断面の時に7ミリ厚で!!!』とお願いしておりますが、この時点での状態の良さは色味の判断ではなく『割れ裂けが少ない時』となります。

 

断裁後に手元に届いた時の断面を見ておきましょう。

 

 

表面の黄緑色に目が行きますが、よくよくご覧いただきますと所々に割れ裂けが細かく縦、横、斜めにあることが分かります。

 

この緑色は、空気に触れると黒く変色していきますが、『変色後の黒の質感』までを読み取ることはできません。

 

青黒檀を板材で保管するリスク

空気に触れると黒くなるので板材にしてから保管します。

 

一方で、木は呼吸をしますので表面積が増えると表面の動きが大きくなります。動く→⇒すなわち細かい割れ裂けが広がるリスクを伴うことになります。

 

 

切りたてから表面を軽く拭き、素材自体が空気に触れやすいよう交互に並べ立てます。

 

 

右奥の白い壁に立てかけて1ヶ月半程経過しました。

 

左手前は、新しく仕入れ板材にしたばかりの青黒檀。

 

 

割れ裂けの広がりまでは観察しきれませんが、

こんな風に空気に触れるようにして保管することで、黒さを安定させていきます。

 

 

黄緑色っぽい表面が、深緑色に変化。

 

さらに一か月半後、

 

 

 

さらに一か月。

 

そろそろ、右奥の素材は使える程に黒くなってきたのかな~

 

 

さて、奥の板材からいっちょ木取りチャレンジしてみますか!

 

 

 

青黒檀の木取りの設計図を書く

 

割れ裂けの多い素材だということは、何度もお伝えしておりますが、改めて木取り前の板材の様子をご覧ください。

 

四丁だるま札の厚み7ミリに整えた板材です。

一丁若衆〜三丁御頭は5ミリなので、だるま札だけの為に割れ裂けの少なそうな部分を確保しなければなりません。

 

 

 

中央に大きなクラックですが、これでも全体的に割れ裂けの少ない部分ということです。

 

まだ若干の緑色が残っていますが、もう片面は、かなりの真っ黒く変色しています。

 

光の当たり具合もあるでしょうか、角度を変えてみます。

 

 

ペンの位置の割れの裏側は、こんな感じに割れが抜けています。

 

 

やっかいなのは!

板面に対して「垂直に割れが抜けている訳ではない」からで、

 

 

 

1ミリ程度のズレであれば計算できますが、5ミリ厚で2センチ、3センチも斜めに割れが入っていることも頻繁にある。

 

ですから、どちらの面も板材の端からの寸法を測らねばならず、想定する位置に係らないように縦横線を入れていきます。

 

 

この位置で1木。

 

この左側は小さい割れがあるので「四丁だるまサイズ」にはならない、、

 

 

 

この位置であれば、想定上では使えそうか?な、、、

 

 

小さい割れが、どれだけでてくるのか?

 

 

果たして何個、、、形にできるのか?

 

 

形になっても、割れのない無傷は何木木取りできるのか、、、嗚呼・・・だるま札。

 

 

 

切り出しで分かる「四丁だるま札」の想定数より、さらに激減する訳

 

 

当然のことながら、こうした部分は剥がれるように割れていきます。

 

一応は、木取り出来そうな部分を集めてみました。

 

 

側面も粗目で断裁した後、細目に切り替え整えますと表情が見えてきます、、、

 

 

まだ切り立てなので、茶色味も目立っていますが、丸く見える部分の中央には「節の点」、、、出ちゃった!涙。

 

 

まぁ、この位ではビクともしませんよーーーまだまだ続いちゃいます。

 

細いクラック、割れ裂け見えますか~~~

 

 

これが、四丁だるま札に木取り出来ないという一番の理由、割れ裂け多過ぎなのです。

 

 

いよいよ、木取り出来そうな部分を下磨きに入ります

 

一見、黒っぽく見えますが、横に木札を見て横方向に筋があるのは、厚みを整える機械を通過する時に生じるヤスリ目です。

 

 

これを、1つ1つ番手を下ろして磨いていきます。

 

 

80番程度から順に、成形前の下磨きでは600番程度までおろしていきます。

 

この先、まだまだ長いので時短しま~す。(⇒時短の内容に興味のある方は過去記事にて

 

磨きおろした後に、長さも切りそろえました。

 

 

奥が割れ裂けで使えない部分。

左の4木は、細かい割れが見つかった素材。

 

手前の9木ご一応は形になった!

 

希少材ゆえ使える部分は使っていく

少し脱線しますが、

一丁若衆〜三丁御頭サイズの厚み5ミリも希少材ゆえ、とことん木取りし使っていきます。

 

 

製材前の青黒檀板材、大きな割れ=クラックが無数に見えます。

 

拡大すると!さらに細かいクラックが無数に散見され、、、あっ、コレ片側ですから、もう片側にも別なクラックがある訳で、使えそうな部分の木取り図を描きますと!

 

 

通常のラインナップのサイズでも、これだけ繊細な木取りを要する訳で。

たかが厚さ2ミリ幅5ミリの差と言うことなかれ!この時点で非常に割れ裂けが少なくないと、「だるま札」に挑戦すらできないのでございます。

 

あっ、5ミリの厚みの板材は7ミリに増えることはないので、最初から木の黒さも分からない、割れの多少も分からない中で、当てどもなく狙ってみるという大ギャンブルなのでございます。

 

1木も取れないかもしれない中で!

一応は、木取りできた9木!断面を磨いて穴あけもしてみよう!!!

 

形にはなった、が、、果たして品質維持が叶うのか?

木取り出来たは良いが、いつもお出ししている真っ黒さを維持できているのか?

 

 

さて、次の画像の「黒檀まぐろ」と「青黒檀」、

まぁ確かに「青黒檀」の方が見た目は黒いですが見分けがつきますか?

 

 

見分けがつけば可成りの強者ですが!

「黒檀まぐろ」も「青黒檀」も、どちらも単体で見れば真っ黒な樹種の木に違いありません。

 

 

これまで何度も記事にしましたし、質感を確かめるべく店舗へお運びいただいた皆様は、一様に「圧倒的な違いがありますね!ぜんぜん違う!はぁ〜、、、比べちゃうとね!」。

 

 

空気に触れると黒くなる素材ではありますが、、、

当初の切り立てよりは、かなり黒くなっているのはご理解いただけると思いますが、「青黒檀」にも個体差があります。

 

青黒檀銀細工象嵌木札

 

見本の「龍虎象嵌木札」は、側面の薄茶色が消え切っていません。

 

 

もう一方の「芳雲」の見本は、横に大きなクラックが入っています。

 

 

商品には使えませんので、もったいなくて表面の見た目が良い素材を見本に使いました。

 

 

 

次は、黒の質感を見てもらうために暗めの画像でみていただきます。

縦長の2つが通常お出ししている青黒檀(二丁纏、三丁御頭)。

 

 

 

 

普段、この黒さで見慣れているので気になってしまいます。

 

 

「青黒檀のだるま札」3木の中で、黒さを比較しますと一番左の「芳雲」程度の黒さがあれば、通常レベルと言って良いかもしれませんが、その他の2木は少し茶色みが気になります。

 

 

 

真っ黒い個体が割れ裂けあり、、、無傷の個体が茶色味がかる、、、

 

 

青黒檀同士で比べてしますと、、、ですが!
『黒檀まぐろ』と比較すると、黒の濃さはあるのです。「風雷神」と「だるま」が『黒檀まぐろ』、中央から右が『青黒檀』。

 

 

 

次は、実際にWebで使用している明るい画像で『黒檀まぐろ』と『青黒檀』。

だるまサイズは『黒檀まぐろ』、縦長が三丁御頭の『青黒檀』。

 

 

黒檀お奨め木札

 

明るいところで見ますと、黒の奥深さや仕上がり感の違い、お分かりいただけますか?

 

『黒檀まぐろ』も高級素材ですが、比較してしまうと。。。

 

 

数年前に出た奇跡の1木

 

 

超高額にもかかわらず、比較的すぐに成約となり巣立っていきました。

 

さて、この黒さ、次は出るの?出ないの?

 

今回試作の『青黒檀だるま札』は、表面の黒さが通常レベルに達しませんので、しばらく寝かせて黒く変化してくれるのか、様子をみたいと思います。

 

通常ラインナップにつきましても、資源枯渇が予想されるため、次の何らかの更新で値上げの予定でおります。気になる方はお早めに!(2024.8.26 蒲生芳雲)

 

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