皆様の想いを木札に表現する職人「蒲生芳雲」でございます。
『木札製材の道は一日にしてならず』ということで、今日は彫刻前の下磨きまで!
先日の動画では説明しきれない!私が木札を作り始めた頃の製材から現在に至るまでを一挙公開いたします。
木札の幅に整えた製材前の「左から桜・黄楊・青黒檀」、
このままでも充分綺麗!このままでいい?
・・・以前からも度々お伝えしている通り、実際に自分の眼で見て素材を厳選した上で、木の厚みを調節するところまでは業者さんにお願いしております。
パット見、目出ちませんが、厚みを調整する機械のヤスリの刃跡が木の表面に残っているのでございます。
そこで、素材の中で一番見やすい青黒檀をアップして見ます。
拡大すると「木の横方向」に『細かい線の筋』が均等に見えています。
この細かい筋が厚みを調整する機械でついてしまう刃の跡で、黄楊や桜材は見えにくいかもしれませんが、同じようにヤスリ目の刃の跡が残っているのです。
綺麗なら!?そのままでもいいのでは?
わざわざ、手を入れる必要があるのか?
『目に見えるか見えないかの凹凸』を取り除く必要があるのか?
その答えは!!!
「凹凸のまま」と「凹凸を磨いた」木札では、使い始めの『見た目』はあまり変わらないのですが、使い込むば使い込むほどに、その時々の状態に差がでてくることを図にまとめてみました。
「厚みを整えただけで表面を磨かず」に彫刻した木札も、凹凸もありますので、それなりの外見は保っているかと思います。しかし、手にした時の感触はザラつきを覚え、木の優しさや温もりを感じることは少なかろう・・・・また凹凸に無駄なよごれが貯まり見た目が汚くなることが想像されます。
あらかじめ、そうしたモノだと思えば、それも良いと思います。しかし、皆様が手や体に触れてお使いになることが多く、また皆様の想いがこもる木札になる訳ですから、最初だけでなく『使い込んでからも味のある木札』になることを望まれるのではないでしょうか。
私が木札を作り始めた当初から思い始めたことですが、15年前と今とでは製材方法に違いがあるので・・・、、
当初は台に板材を並べてヤスリがけをしていました。
まんべんなくヤスリが当たるように、「板材」が動かないよう工夫を加え
ヤスリの番手を徐々に下していきますが
それなりに圧力を掛けますので、ヤスリを掛けている反対の面が台との摩擦で傷が残ることが多く難儀をしたのでした。
そこで、刃物で削ると表面が綺麗に仕上がるという事で、鉋掛けにも挑戦しました!
ラインナップの中では、桜材はカンナが入りやすい方なのですが、木材全体からすると桜材も堅い方の部類に入り、カンナがうまく入りません。
そこで、もっと効率よく綺麗に仕上がる鉋のような刃で削る機械はないのか!?
と、試したのですが・・・今や使いかけのヤスリ置き場と化しています。
こんな風に刃がついておりまして、上のキャタピラの部分で挟むように削っていくのですが、
フダヤドットコムで扱う素材の堅すぎにより刃が立たず、、、
黒檀などは堅すぎて逆に刃が持たないのでございます。
それでも何とか使いこなそうと頑張ったのですが、板材が長いと入口~出口の距離も非常に長くなる訳で、、、(入ってから出るまでなので、板材の倍以上の長さの広い場所が必要)
フダヤドットコム当初の「さくら材1種」の時に少し使っただけ、、、
当店のランナップの木材は堅すぎるので、削るよりも刃のメンテナンスばかりになってしまうと機械での製材は諦め、
現在のスタイルになった訳でございます。
その下磨きの工程では、ヤスリの番手を4回おろし磨いてまります。
その4段階で下磨きで、この位までに仕上ております。
「磨いた材」と「磨く前の材」の違いをご覧ください。
光具合で違いを分かって頂ければと思うのですが、冒頭で紹介の青黒檀のヤスリ目の筋が残っているのと、いないのでは当然違ってまります。
さらに分かり易い素材がありました。スネークウッド、豹柄札!
自然の蛇紋、豹柄が特徴でありますが、この角度からだと厚み調整のヤスリ目が目に付き=それは表面に白い霞がかったよに見えると思います。
本来は深みを感じる素材ですが、このままだと奥行きを感じることもありません。
しかし、下磨きの段階で4回ほどヤスリをおろし磨いた姿を!
手にした時の手触はもちろんのこと、この磨きが彫刻のシャープさ、汚れの付きにくさ、使い込んでの味ノリを生むのでございます。
木の素材達が喜んでいるような気がしませんか?
いい顔つきになってきたなぁ。
ようやく、板材の下磨きが終わりましたが、木札の形になるまで続けて書いちゃいます。
次に木札のサイズにあった長さに切断していく訳ですが、
フダヤドットコム当初、桜材だけだった時は、切断したままで処理をしておりませんでした。
角を取る(面取り)と、まぁ見栄えは大体いっしょ、、、
ですが、ずっと気にり続けた「この断面」の荒れ具合、、、
まずは、ヤスリ掛けをしてみました。
手間が掛かる割には、桜材の断面は綺麗にはなりませんでした。
そこで!
目の細かい鋸刃でもう一度断面を削りなおしてみました。
案外と綺麗に整ったので、さくら材の断面の処理は、この位でいいのでは?と、『現時点』では思っているのでございます。
もちろん4つの角と断面の面取りも忘れません。
こうして、現時点での桜材の下磨きに至ったのでございます。
しかしながら、素材によって木の特性も違いますから、磨いて鏡のような光沢がでる黒檀類や本黄楊などの高級素材は、
断面もヤスリの番手をおろして磨き上げると共に、角の面取りを施します。
素材毎に特性が違いますので、作業の工程も変えるだけでなく、さらに良くなるようにと日々進化を続けているのでございます。
ようやく、木札の形には成形されました!が~?
まだ、穴あけが残ってました。(笑)
これも手作業で開けていますが、開けたままですと、下の左2つのように穴のフチが毛羽立っているので、
面取り(角落とし)用のボール盤で、穴の周りを削るのでございます。
ようやく下磨きが終わって文字を彫刻する手前までの工程が終わった訳ですが、、、
実は、これを10秒あまりで切り抜いてしまうことが出来るのです。はい出来ました~10秒速っ。
何だったんだ?
積み重ねてきた15年・・・何てことはありません。
一見普通の札に見えますが、手元で見ますとレーザーで切り抜いた側面の焦げが目立ち、加えてヤスリ目と同じような筋跡が強く残っており、綺麗な印象は持てません。
メインは、側面ではなく皆様の想いを込めた文字や言葉ですし、この側面は使い込んだら、ちょっと汚くなりそうです。
手にしてみると感触が全く違います!!!自分で云うのも憚れるのですが、手前のレーザー切抜きの木は木札というより木片?木の温もりや、自然が持つ癒しの力も、全く感じることはありません。
愛情がこもっていない。。。
さらに堅い黄楊や黒檀類は、このように切り抜く事はできません。
お伝えしたいのは、木であれば何でもいいというような量産的な仕事は僕には不向きであり、木の温もりを感じる優しい木札に仕上げたいのでございます!
木と真っ直ぐに馬鹿正直に向き合って、対話をしながら皆様のご依頼を『作品』として仕上げていきたいのです。
ようやく彫刻前までの下磨きができました。
次回は、彫刻から仕上げの磨きの15年をお伝えしようと思います。
***木札職人芳雲の木札作り***
(全工程公開~リンクしました)
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・木札の穴あけ
・文字の配置、バランス調整
(隅から隅まで縁起よいことがあるように)
***「神は細部に宿る」***
正直で真っすぐなものづくり
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