先日は、1つ1つ銀細工の形は同じじゃないの!?
などなど、ご紹介をしましたが、
象嵌木札:純銀細工を隙間なく木札に嵌め込む職人技
・純銀細工の象嵌は落っこちないの? (17/03/2017)
・1つ1つ銀細工の形は同じじゃないの!?(14/03/2017)
・職人魂に火をつけられた一言! (19/12/2014)
そもそも、何で輪郭も全て同じにすることができないのか?
って、思われる方もいらっしゃると思います。
高い技術で同じ輪郭にできないのか?
ご理解いただくためには、金型ができるところからお話をさせて頂く事が肝要かと思います。
金型彫刻?
何かに流しこんで同じ形にするんじゃないの?
そんな疑問から、お応えしたいと思います。
さて、木札に嵌め込む銀細工ですから、1つは約1センチ~1.5センチ四方。
この大きさの銀細工を1つ1つ鑢(やすり)で削る訳にもいきませんので、
金型を彫刻して同じ形状の銀細工を作ります。
金型ですので、それぞれのサイズごとに、それぞれ金型がありまして、金型に合せて丁度良い大きさに切断し銀の板を
金属プレス機で圧力を掛けて
ドーーーンっ!!!
こうして金型から形どられた銀細工を嵌め込む訳ですが
この金属プレスから先の切り抜く工程は次回の記事でご紹介をするとして、
これからが金型彫刻の巻、本番でございます。
いつもながら、前置きながし。。。
まずは、下書きにする原稿を用意します。
風神雷神図屏風です・・・
著作権の無くなった古物などは、しっかり描写しないと漫画チックになり安っぽく見えてしまいますので、よりリアルに再現するよう心がけなくてはなりません。
原稿を投影機を使って、程よい大きさを決めて拡大いたします。
彫刻する意匠の細かさによっておおむね金型の5~8倍位の間で、拡大する倍率を決めます。
風神雷神は、少しばかり細かい意匠ですので今回は8倍に拡大して必要な線を書き写してまります。
1.5センチの8倍ですので、約12センチ四方の下絵になります。
金型彫刻に必要な線を書くのですが、ただ輪郭をなぞって書けば良いという訳ではありません。
実際には、この原稿から8分の1の大きさに縮小されること、また実際に金型を彫刻する刃物(カッター)の太さも考慮しつつ、
輪郭をオフセットさせたり、実際の線の上をなぞったりと、彫刻するに必要な線を想像しながら下書きをいたします。
投影機で足りない部分は、実際に見ながら必要と思われる線を付け加えたり、修正したりします。
金型彫刻に必要な線ですから、実際の風神とは少し雰囲気が違って見えると思います。
これを基に金型を彫刻するのですが、判子と同じ原理で、逆にして元となる原版の制作をいたします。
原版はアルミの薄板で表裏逆さにして貼りつけた後、この線をなぞるように、鏨(たがね)という工具の一種で「針打ち」をして印をつけていきます。
下絵を取り省いても線が分かるように印をつけるということです。
次に、この下絵を取り除き針打ちに沿って、次の工程で使う平型彫刻機に取り付けるガイドになるよう、下打ちした点を溝にしてまります。
下絵がそのまま、アルミの原版に点、点、点・・・
実際には、もう少し強く打ちこんで、はっきり見えるように打ち込みますが、
工程のご紹介と云う事で軽めにしか打ち込んでおりません。
この点にそって、違う種類の鏨(たがね)で平型彫刻機を動かすガイドになる溝にしていきます。
平型彫刻機を動かすガイドの線になるのですが、8倍に拡大しましたので、
線と線の交差するところで微妙な凹凸をつけられますので、ガイドを止めたい部分、流して進めたい部分など考慮しながら彫り進めます。
これで金型を彫刻する下準備が整いました。
線の溝で彫りあげたアルミの原版を平型彫刻機に固定し、原稿の8分の1に縮小されるようセットします。
この原版のガイド線に沿ってなぞると、縮小して刃物の部分が動きます。
しかし、この平型彫刻機は、通常平面を彫刻する機械ですので、風神様の筋肉の盛り上がり、毛や羽衣の流れなどは、手加減で探りながら彫り進めます。
刃物(カッター)の刃先も、1つの物だけでなく太さや形状を変えて調整します。
時にはガイドの線をなぞってあたりをつけ、またガイドの線にはない凸みや凹みを肉付けする部分を確認、時にはガイドの線にならいながら、深い浅いの強弱をつけて彫り進めていきます。
これが金型彫刻の中でも一番難しい感覚的な技術、
半立体で立体的に表現する肉彫りです。
彫刻中は、柔らかい粘土をつかって何度も形状を確認しながら彫り進めてまいります。
銀細工の凹凸部分は約2ミリほどの厚みしかございません。
その中で指、脚、筋肉、髪や羽衣の流れ、虎の銀細工であれば、目鼻や牙はもちろん毛並みなども立体的に表現することになります。
このように約1.5センチ四方の銀細工に直接凹凸をつけて作るのは、非常に難儀なことでありますが、大きく拡大したものをガイドでならいながら小さく縮小し、忠実に輪郭取りをしながら半立体化させていくことで、リアル感のある銀細工の基に仕上げていくのです。
いよいよ、彫刻機から金型を取り外して仕上げに入ります。
このように、もう少し出っ張らせたいところを叩いたり、
キシャゲという鏨よりも少し長い道具でケガイたり、
面の部分は、砥石で磨いたりして、金型を仕上げます。
仕上げの磨きも終わりましたら、鉄でできた金型を炉で熱して「焼き入れ」をしますが、これは、専門の炉を持ったところにお願いしております。
「焼き入れ」をして金型を堅く固めたから、冒頭に紹介した金属プレスの工程を経てますと象嵌で嵌め込む銀細工が出来上がることになります。
機械は使いますが、ほぼほぼ手作業ということ、感覚的な要素が含まれていることが伝わったでしょうか?
最後に・・・
この金型は、どこで彫刻しているのかというと、
フダヤドットコムの店舗の奥?!
そうです、フダヤドットコムの母体「蒲生彫刻」は金型彫刻の職人工房。
私は、蒲生彫刻の四代目で金型彫刻もしておりました。そして三代目の父は現役です。
どうでした?
象嵌木札に使う銀細工の金型ができるまで?
普段使いとして、和風のアクセサリー的に使って下さっている方も多くいらっしゃいます。特にちょっと和物が好き!って方には、より好評を頂いております。
え?
オリジナルで作りたい!
けど、いくらくらいかかる?
家紋などの平面の彫刻であれば、細かさにより金型代が4~5万円といった所。
半立体の肉彫りで、風神様程度の細かさですと金型代が7~8万円。
この他に銀地金の調達、次の工程で切り抜いたり、木札に落とし込みを作り、形になるまでのデザインや企画料も含めますと、一つ目は12万~18万円程度になりましょうか。
同じ銀細工を使って二つ目からは、もう少しお安くなりますが、一度に何個作るのかで、お1つ当たりのお値段も変わってこようかと思います。
いやーーー長編~~~
象嵌木札に嵌め込む銀細工の金型ができるまで!!!
最後まで、ご覧いただきありがとうございます。
あーーーそういえば!!!
銀細工を切り抜く工程がまだ、、、次回にします。
象嵌木札:純銀細工を隙間なく木札に嵌め込む職人技
1.職人魂に火をつけられた一言!
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2.純銀細工の象嵌は落っこちないの?
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3.1つ1つ銀細工の形は同じじゃないの!?
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4.象嵌木札の銀細工が出来るまで(1.金型を彫刻する)
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5.象嵌木札の銀細工が出来るまで(2.嵌め込む銀細工の形に)
★芳雲のルーツ.想い
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